夕暮れの四川。 やわらかな風が吹きはじめる頃、白くふくらんだジャスミンのつぼみが静かに花開く時を待っています。 晴れた日の午後から夜にかけて、今にも咲きそうな白いつぼみだけを一つひとつ手摘みで収穫します。 収穫された花は温度や湿度を細かく管理されながら開花を促され、最も香り高く咲く瞬間を迎えます。 四川省の高級ジャスミン茶は、中国を代表する花茶のひとつとして知られています。 その一瞬の香りを茶葉に移し取るために、百年以上にわたり受け継がれてきた伝統技術があります。 原料には、四川の小葉種茶樹から摘み取られた若く柔らかな茶葉を使用。丁寧な萎凋、殺青、揉捻、乾燥を経て、香りを受け入れるための茶葉へと仕上げられます。 その後、茶葉に花の香りを移していく伝統技法「窨花(いんか)」を何度も繰り返します。 花と茶葉を重ね、香りを移し、花を取り除き、乾燥させる――。 こうした繊細な工程を十二にも及ぶ段階を経て丁寧に仕上げることで、四川ジャスミン茶ならではの気品ある香りが生まれます。 湯を注ぐと、清らかな花香がふわりと立ち上り、口に含めばやさしい甘みと澄んだ余韻が静かに広がります。 華やかでありながら決して強すぎず、繊細な奥ゆかしさを感じさせる香り。 それこそが、長い歴史の中で磨き上げられてきた四川ジャスミン茶の魅力です。 他産地とはひと味違う、繊細で上品な香りと味わいを、ぜひお楽しみください。



